WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(31日、東京・大田区総合体育館)で、4階級制覇を狙う挑戦者、田中恒成(畑中)を痛烈なTKOに打ち取り、貫禄を見せつけた4階級制覇の先輩チャンピオン、井岡一翔(Ambiton)は1日、一夜明けの会見を行った。「格の違いを見せると言ってきたことを結果で証明できたと思う」とふり返った後、あらためて世界王座統一戦への意欲をあらわにした。
偶発的な一撃や、展開に恵まれての結果ではない。理詰めに戦いを構成し、才能豊かな不敗の挑戦者をTKOにまで追い詰めた。信頼してきた自分の力を再確認した満足感が、その表情を明るくしていた。 「多少、疲労感はありますが、ほとんど普段と変わらないですね。(パンデミックという)みんなが初めて経験する大変な年でしたが、大晦日という1年の最後の日にこういう結果が出せて、(自分がやってきたことが)無駄じゃなかったという気がしています」 戦前から確信していたものに、さらに確信を重ねられたと思う。 「(イスマエル・)サラス、佐々木(修平)トレーナーに言われた戦略的なものを推敲しながら戦えたというのもありますが、それ以上に、どんな展開になっても負けないと余裕がありました」
ボクシングには一瞬の思い違いや、想定外がたくさんある。たとえば、1ラウンドもそののっけ。田中の右ストレートへの対応がそうだ。 「打ってはいけない左フックを打ってしまって、右を打ち込まれました。そういう若干の判断ミスがあっても、修正できました」 そのたびに頭の中に叩き込んだ戦術の譜面をなぞり、インプロビゼーション(即興)を色付けできた。だからこそ、2度のダウンを奪い、最後も決定的なダメージを与えてのTKO勝利につなげられた。 「ボクシングに完璧はないけれど、そういうミスを減らすこと」。飽くことなく続けてきた作業が、さらに自分を強くしてきた。井岡の信念をそのまま表せた戦いだった。 田中の戦力を軽視していたわけではない。実際に戦った後も、「評判どおりにスピードがあって、パンチもありました」。だが、「時間的なものを含めて、やってきたことが違います」。積み上げてきた経験が生み出す力が勝利を導き出したと強調した。 「この時点で戦うことになった以上、自分が田中に初めての黒星を経験させるしかありません」
昨夜、今後の目標は明らかにしている。3月挙行予定のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ=WBC)、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア=WBAスーパー)の両世界王者の対戦に勝ったほうとの統一戦だ。 「以前はエストラーダが充実していると思っていましたが、最近はローマンの総合力が上回っていると感じるようになりました」 いずれが勝ったにしろ、対戦が実現するまでには時間がかかるかもしれない。 「それはそれで仕方ありません。決められた一戦一戦で結果を出していくだけです」 井岡の言葉は、どこまでも前向きだった。 文◎宮崎正博 写真◎Ambiton GYM、リモート会見より
ボクシング・マガジン編集部
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