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Sunday, February 28, 2021

自分だけに音が聞こえる魔法のスピーカー「SoundBeamer」 - GIZMODO JAPAN

ヘッドホンを装着しなくても、自分だけの音空間。

最近、オープンイヤー型のオーディオに勢いがあります。JLabBoseはサングラスをヘッドホン化するアイデアを打ち出しましたが、さらに興味深いのがイスラエルのスタートアップ、NovetoによるSoundBeamerです。SoundBeamerは、狙ったユーザーにしか聞こえないように音を届けるするデバイス、とされてます。

狙った人の耳だけに音をビーム

SoundBeamerは卓上型で、3Dモジュールを使ってユーザーの耳を認識し、耳が移動してもトラッキングして音を届けます。NovetoのCEO、Christophe Ramstein氏によれば、SoundBeamerはユーザーの耳を検知すると「見えない音のポケット」を頭の両サイドに作りだします。髪が長くても、もじゃもじゃのひげが生えてても、マスクをしてても大丈夫。SoundBeamerは個人を認識し、リアルタイムでついていくそうです。

SoundBeamerのすごいところは、ユーザーの聞いている音が他の人から聞こえないってことです。普通のスピーカーは空間全体に音を伝えますが、SoundBeamerはユーザーだけのためのオーディオを実現するよう作られています。Ramstein氏が言うには、これが可能になるのは「音波減衰」が大きいからだそうです。音波減衰っていうのは要するに音が抑えられるってことで、SoundBeamerの場合3フィート(約90cm)の距離で20dBくらい音量が下がります。Ramstein氏によれば、普通のスピーカーだと部屋の端まで行っても3dBくらいしか下がりません。なのでたとえばSoundBeamerで75dBで音楽を聞いている場合、近くにいる人は「何か聞いてるな」くらいはわかるかもしれませんが、はっきりとはわからない程度になるそうです。もっと小さな音で聞けば、周りの人からは音がまったく聞こえないくらいになるかもしれません。

そんなわけでSoundBeamerは、見た目はミニスピーカーとかサウンドバー風味かもしれませんが、使い方としてはヘッドホンに近くなるはずです。

「何が起きてるかというと、我々は空気の非直線性の力を使って非可聴音を伝え、次に空間の特定の場所で可聴音を作り出す力を使っているのです」Ramstein氏は米Gizmodoのビデオインタビューで説明してくれました。「つまり、頭の位置に基づいてふたつの音のポケットを作り出すのです。これら可聴音のポケットを作りますが、それぞれは独立しています。つまり、我々の技術は見えないヘッドホンのように機能するのです。」

使い勝手を高めるAIを搭載

SoundBeamerについての最初のニュースは数カ月前に伝わりましたが、今回Novetoは新たなハードウェア・ソフトウェアの機能を発表しています。その機能とはAIベースの内蔵音声で、ユーザーの顔やジェスチャーを認識したり、環境音をモニタリングしたりが可能です。

Ramstein氏は、このAIはありがちなデジタルアシスタントとは違うといいます。「我々は音楽を再生するエンジンは作っていません。『音楽をかけて』とか『ジョークを言って』とかじゃないんです。私たちはその手のものは作りません。」

SoundBeamerにAIが入るのは、ユーザーがやりたいことを理解することで、使い勝手を向上させるためです。Ramstein氏は、SoundBeamerは本体にすべての機能が内蔵されてるので、収集したデータはクラウドにアップロードしない、とも付け加えました。

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Image: Noveto

実物にはまだ触れてません

ともあれ、なんだかSFそのものです。他のオープンイヤーオーディオはだいたい、スピーカーのパーツが耳のそばにはっきり見えてます。音質に満足できるかどうかは別として、どうやって音が耳まで届くのかは一目瞭然なのが普通です。一方SoundBeamerの場合はそれがわかりにくいし、今のこのご時世ではデモしてもらうのも不可能です。個人に音をビームするっていう挙動は、Zoomではうまく伝わりません。なのでSoundBeamerが彼らの言う通りに動くのかどうかは、実物を手にできるまではなんとも言えません。それでも、Zoom会議が始まったらヘッドホンを着ける必要なく、耳に音がビームされてくる…それが可能になるとしたら非常にクールです。

SoundBeamerの最初のバージョンは固定式、ひとり用になる予定です。でもRamstein氏は、第2世代では一度に複数ユーザーへのビームが可能になるかもと言ってます。さらに将来的な使い道に関しても、Ramstein氏は野心的です。たとえばウォーキングマシンから音がビームされて、ジムでヘッドホンを着けなくてもいいとしたらどうでしょうか。または映画館で、人によって違う言語で映画が観られるとか。はたまた美術館で作品についてのガイドを、指定の情報量と言語で聞ける、なんてのもよさそうです。

Kickstarterでプレオーダー受付中、OEMの希望も

現在SoundBeamerはKickstarterでプレオーダーを受け付けていて、価格は595ドル(約6万2000円、早期オーダーすると345ドル≒3万6000円にディスカウント)、発売は2021年中となってます。クラウドファンディングのガジェットはアイデア倒れになることも多く、お金だけ出して何カ月も完成を待った末に何も手に入らないケースもざらなので、普段ならこのへんで「実現できるかどうかわかりませんよ」的な注釈を入れるところです。でもRamstein氏は、SoundBeamerは今年の第4四半期には発売できると自信を見せていて、製造にあたってはFoxconnと組む予定だと言ってます。そう、AppleのiPhoneの製造委託先、あのFoxconnです。そして彼は、この技術はNovetoのデバイス以外でも使えるだろうと希望を語っています。

「良いニュースは、この技術が完成したら、OEMや大手テック企業への提供も可能ってことです」Ramstein氏は言います。「今年出荷するNovetoブランドの製品から、統合可能なあらゆる相手へと持っていくのは、かなり簡単にできるはずです。すべてのパーツはFoxconnやパートナー企業が生産し、すべてのインテリジェンスはチップセットに詰め込んでいて、付属のソフトウェアによって統合はとても簡単になることでしょう。」

夢は広がりますが、まずはSoundBeamerそのものが実際どんなものなのか、ぜひ試してみたいです!

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