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Saturday, February 5, 2022

「ほぼ引退してました」 今田竜二を“復帰”に導いたZOZOとサウジの縁 - ゴルフダイジェスト・オンライン

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◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ 2日目(4日)◇ペブルビーチGL(6972yd、パー72)、スパイグラスヒルGC(7041yd、パー72)、モントレーペニンシュラCC(6957yd、パー71)

日本で行われた昨秋の「ZOZOチャンピオンシップ」で、マイクを握るつもりだった今田竜二の手にはゴルフクラブがあった。コロナ禍の国際間移動に制限が伴い、直前になって欠場者が続出したため、テレビの解説業で来日する予定が選手としてプレーすることに。45歳にとって2015年「バーバゾル選手権」以来、実に6年ぶりのPGAツアー出場だった。

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結果は予選落ちのない4日間で77位。1人の棄権者をのぞく最下位だったが、72ホールを戦い抜いたことで、止まっていた時計の針は動いた。2012年にシードを喪失した今田の近年の出場資格は、2008年「AT&Tクラシック」制覇で得た「ツアーの歴代優勝者」のカテゴリ。それが「ZOZO」でフェデックスカップポイント(2pt)を得たことにより今季の出場優先順位の入れ替え(リオーダー)にかかり、上位の資格にステップアップした。

必ずしも多くの大会に出られる位置ではない。ただ、今週の「AT&Tペブルビーチプロアマ」は、トッププレーヤーの多くがアジアンツアー「サウジインターナショナル」に参戦したことにより、下位選手にも出場のチャンスが巡ってきた。今田は当落線上にいたひとりで、「(前週)金曜日の時点では(待機選手の)4番目くらいで、飛行機も取っていなかった」という週末に急きょフィールド入りが決まった。

今季2試合目とはいえ、昨年まで約5年のブランクがあった。「出ないというチョイスもあるんでしょうけどね。まったく上位で戦えるコンディションではないし。でも、せっかく出られる機会があるからトライしないと。逃げている感じになってしまうので」。モントレーペニンシュラCCを回った2日目は出だし1番でいきなり“目玉”になるなど、開始4ホールで5回バンカーからのショットを強いられた。「まだ試合勘というか、練習でできることがまったくできない」と「77」のスコアに重い息を吐く。6オーバー142位は3日目終了時の予選通過ラインが遠い。

青木功丸山茂樹に続き、史上3人目の日本人優勝者は中学時代に移り住んだ米国が今も“ホーム”。第一線を退いていた間は「“ほぼ”引退してました。もう、やるつもりもないかなと(自分で)思っていた」と語る。復調できない要因には、(あばらの)故障の問題もあった。「最後の2016年なんかは練習しても良くならない。やればやるほど、どんどん下手になっていく感じがして。少しでもうまくなっている気がしないと、やる気もなくなってきますよね」と精神的にも追い込まれた。

そんな風に、選手として先が見通せなくなっていたとき、実績と偶然が重なって舞い降りてきたPGAツアーへの出場機会。気づけば、あばらの「練習すると次の日に動けないくらい」の痛みも和らぎ、「今は少しずつ練習をして、少しずつ成果が出ていると感じられる」ようにもなった。「ZOZOに出られたおかげで試合のチャンスも出てきた。すごくモチベーションにもなるし、練習しようという気にもなる」。職場の確保や、タイトル奪取に必死だった昔と心境は同じでなくとも、足元のボールを思い通りに操りたいという願いは変わらない。

近年は解説者、ラウンドリポーターとして外からPGAツアーやメジャーを見るようになった。勝負のシーンに送る真剣なまなざしは、どこまでも選手目線、PGAツアーのメンバーの視線。「『これ、(自分も)イケるんじゃないか』って思うときもあるし、『あんなところに絶対に打てない。すごい…』というとき、両方ある」。時代やトレンドの変化も肌で感じている。「この15年くらいで結構変わった。今はパワーでどんどん攻めて、強気のゴルフを見せていく。昔は“ゴルフ職人”が多かったでしょう。スピンをどうするとか、ボールをいかに曲げてピンに寄せていくかとか」。もちろん今田もそんな生粋の職人のひとりだった。

「僕が20代でプロになって出てきたとき、(ベテランを見て)『このオッサン、どうやって勝ったんだろう』なんて思っていたけれど、まさにそれが今の僕で。飛ばないし、下手だし」と苦笑いする。日本の新興ブランド「プロトコンセプト」のアイアンセットに目をやっては、「もう最高に良いクラブを提供してもらっているのに」と、じくじたる思いがする。

「それでも試合に出る権利があるのはうれしい」と頷いた。情けない自分に嫌気が差しそうになるのも、真剣であればこそ。今後は解説業にも意欲的でいながら、再びフィールドの薄い大会から出場機会をうかがうつもり。

「こういうスコアですけど、ここに来て本当に良かったと思える。こういう緊張感の中でプレーできるのはなかなかない。少しでも経験を積んで、少しずつ、試合勘を取り戻していければ。若者との戦いで、オジサンも少しでも頑張れれば。少しでも、何か持ち帰るものがあれば」。かつての主戦場には今も、心を燃やす火種があった。(カリフォルニア州ペブルビーチ/桂川洋一)

※編注:2日目のコースに誤りがあったので、本文を訂正しました

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