2023/01/11
(最終更新:)
一時は19位まで順位を落とした東洋大学。往路を11位で折り返したが、復路は6位と粘り、総合10位で継続している中では最長の18年連続シード権を獲得した。酒井俊幸監督は「苦しい2日間でした」と振り返った。
万全のオーダーが組めず出遅れも、主将・前田義弘が魂の走り
東洋大の2区はこれまで、2年連続でエースの松山和希(3年、学法石川)が担ってきた。しかし自転車でのけがなどもあり、16人のエントリーメンバーへの登録が見送られた。さらに12月になってから、これまでほとんどなかった部内での新型コロナウイルスへの感染、メンバーの疲労骨折などもあり、「(出走する)10人のエントリーも難儀しました。ちぐはぐしたようなオーダーになってしまったかなという感じです」と酒井監督。九嶋恵舜(3年、小林)、熊崎貴哉(3年、高山西)など実力のある選手も起用できず、練習を完全にこなせていない選手を起用せざるを得ない状況だった。
1区は学生連合の新田颯(育英大4年、千原台)の飛び出しがあったが、その他の選手はついていかず牽制(けんせい)し、スローペースに。しかし副将の児玉悠輔(4年、東北)は17kmを過ぎてから徐々に集団から離れてしまい、1位とは56秒差の17位での襷(たすき)リレーとなった。2区はエースとしての働きも期待される石田洸介(2年、東農大二)。しかし思うようにペースが上がらず、区間19位、チームも19位に後退してしまう。
3区の小林亮太(2年、豊川)は区間9位で順位を三つ上げ、4区の柏優吾(4年、豊川)は区間13位だったもののチーム順位は二つ上がり、14位で5区の主将・前田義弘(4年、東洋大牛久)に託された。
身長190cmと長身の前田は、「2代目山の神」柏原竜二さんにあこがれて東洋大に進学した経緯がある。序盤から苦しい表情になりながらも、しっかりとした足取りで前を追い、山梨学院大、東海大、明治大をかわして11位で芦ノ湖のゴールにたどり着いた。区間5位と、主将の責任を果たす走りだった。
酒井監督も「柏原が走った区間を最後に走るということで、本人も責任を持って挑みました。非常に良い攻めの走りをしてくれたと思います」と評価。柏原さんからも酒井監督の妻でありコーチの瑞穂さんに「感動した」とLINEがあったという。
8区木本大地が区間賞でシード圏内に迫る
シード権内の10位までは1分27秒差で復路をスタート。6区の西村真周(1年、自由ケ丘)は区間13位で順位をキープ。7区の佐藤真優(まひろ、3年、東洋大牛久)は区間15位と苦しみ順位を一つ落とし、12位での襷リレーとなった。本来は6区、7区に九嶋や熊崎を起用したかったといい、酒井監督は「その分が出たかなと」と振り返る。しかしここから昨年復路2位となったチームの底力が発揮された。
8区の木本大地(4年、東洋大牛久)は襷を受け取ると、しっかりとした足取りで前を追った。17km過ぎで東京国際大の宗像聖(4年、学法石川)を抜いて11位に浮上。そのまま前を追い、直線では前を行く明治大、城西大が見える位置に迫った。10位までは33秒差に縮め、戸塚中継所にたどり着いた。タイムは1時間4分16秒、法政大の宗像直輝(3年、東農大二)と同タイムでの2人同時区間賞獲得となった。
木本は昨年4区を走り区間18位と苦しみ、6位でもらった襷も12位まで落としてしまった。だが、昨年の主将を務めて5区を走った宮下隼人(現・コニカミノルタ)に走る前から「お前の分も俺が挽回(ばんかい)する」と声をかけてもらった。復路の8区では副将の蝦夷森章太が区間4位の好走を見せ、前田からは「しっかりお前の分も走ってくるから」と言葉をもらった。チームメートのみんなから「救ってもらった」という思いを持っていた。「箱根の借りは箱根でしか返せないと思い、箱根駅伝での好走を目指してこの1年間、気持ちの面でも練習の面でもしっかりと準備をして臨んできました」と話す。
「今度は自分が救わなきゃ」
8区は後半に遊行寺の坂などきついアップダウンがあるコース。「(遊行寺の坂は)想像以上にきつかったんですけど、去年の苦しみに比べたらこんなもんかって気持ちはあリました。去年自分が苦しんだのを救ってくれたのは復路の選手だったので、自分が今度は救わなきゃという気持ちが大きかったです」。東洋大牛久高から7年間ともに走ってきた前田への思いもあった。「前田キャプテンのことを最後は自分が救うんだって気持ちがあったので、前田の存在は本当に大きかったです」。走り終わった後、前田からは「本当にありがとう」と声をかけられたという。
木本は大学4年間で8回疲労骨折をし、思うように走れない時期も多かった。酒井監督も「苦労人の選手が最後に区間賞を取ってくれたことが箱根駅伝らしいというか、改めて教えていただいたなと思います」と感慨を口にする。今の4年生の代は駅伝で区間賞を取ったことが一度もなかったが、最後の最後に4年生の意地と気持ちを見せた形になった。
危機感を持って上を目指す
9区は梅崎蓮(2年、宇和島東)が区間4位と好走。13km過ぎで前を行く明治大をとらえ、鶴見中継所の直前で城西大もとらえて9位に上がった。梅崎は昨年の関東インカレ男子1部ハーフマラソンで2位に入るなど、長い距離への適性を酒井監督も認める選手。今後にとって明るい材料となった。
アンカーの清野太雅(4年、喜多方)は3年連続の10区。2秒後にスタートした城西大の山中秀真(3年、四日市工)が追いついてくると、ラスト1kmを切るまで小さな駆け引きをしながら2人旅に。清野が前に出る場面も何度もあったが、ラストスパートで競り負け、苦しそうな表情でゴールした。
結果として18年連続のシード権は確保したが、本来はこんな順位で戦うチームではないという気持ちは、監督、そして選手全員の中にもある。木本も「区間賞についてはうれしいですが、順位は悔しいです」と話し、前田もゴール後に涙を見せた。酒井監督も「やはり吉居くん(大和、中央大3年、仙台育英)たち世代が非常に力を持っていて、序盤から早い展開になるのはスタンダードになると思います。そこに乗っていけるような、松山を中心として一緒に競い合えるような選手層を作っていかないといけないなと改めて思いました」。
3年ぶりに沿道の応援も解禁され、多くの観客から「東洋どうしたんだ」という叱咤(しった)激励ももらったという。「初めて最後尾の方の景色も見れて、もう二度と味わいたくないと思いました」と苦笑する。
レース後には駒澤大の大八木弘明監督が勇退を表明した。酒井監督も大八木監督もともに福島県出身、同郷の先輩として言葉を交わすことも多かった。「やっぱり長くやってると我慢するときがある、という話は常々いただいていまして、その中でも常に世界を見据えた指導はしなきゃいかんぞとは言われていました。選手と同様、指導者も襷を受け継ぐつもりでやっていきたいと思います」。駒澤大の次の監督となる藤田敦史ヘッドコーチは、酒井監督とは同学年。高校時代から同じ地区でよく知る選手でもあった。「カラーも似ているチームですから、お互い刺激しあって高めあっていきたいなと思います」
来年、箱根駅伝は100回大会を迎える。意気込みを問われた酒井監督は「やはり100回大会ってみなさん特別だと思いますので。出場できる挑戦権があるということをアドバンテージにしながら、ただそれが緩みにならずに最低限、今シーズンのチーム力を超えて行かないといけないと思います。今大会でも例えば『同じ力だったら下級生を起用しよう』という考えで取り組んでいたチームもあると思いますので、しっかりと危機感を持ってやっていきたいなと思います」と答えた。先輩たちの思いを受け継ぎ、「強い東洋」を取り戻すためのスタートはすでに始まっている。
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