「二刀流」という言葉は、米大リーグでの大谷翔平選手(27)の活躍で、社会に幅広く浸透した。渡米時は論議を呼んだ二刀流が成功した背景や影響とは? プロ野球・ヤクルトなどで活躍し、現在は少年野球の指導に当たる広澤克実さん(59)は「ダメ出し」をしない教育の効果を指摘する。【聞き手・中村有花】
これまでの野球界は、選手の持つポテンシャル(潜在能力)を指導者が決めていたと感じる。ところが、大谷選手は米大リーグでホームランを40本以上も打って、160キロの球を投げる。それは、人には無限の可能性があることを証明している。つまらない、ちっぽけな考えで子どもたちを教育すると、可能性の芽を摘んでしまう。大谷選手は、常識とされた枠組みは超えられると気付かせてくれた。
野球が米国から日本に伝わったのは1872年とされる。プロ野球が始まった1936年には秋季リーグの優勝を争う試合で、タイガースの景浦将(まさる)と巨人の沢村栄治が投げ合い、景浦は沢村から洲崎球場の場外である東京湾に特大のアーチをかけた。景浦は投打両方のタイトルも取った。時代により価値観は変わる。その意味では、最初の頃に戻ったのではないかと思う。
私たちが選手の頃は、二刀流なんて、全く考えられない時代だった。…
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