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Monday, February 8, 2021

「競うライバル」でなく「一緒に立ち向かう“同志”」だった 宇宙飛行士試験・最終選抜まで進んだ者しか見られない“景色” - ログミー

まるでゲームみたいな“パイロットの資質”を見る試験

内山崇氏(以下、内山):あとはロボットアームを操作する試験なんかもあって、座標系の2種類ですね。

一人称視点と三人称視点というのがあって。(一人称視点は)自分が動くとともに座標系も動く。「自分が前だと思っている方向」がずっと前で、座標系自体も変わる。

(三人称視点は)自分が立っている位置で固定された座標系の中で動かす。という2種類を、間違えずに巧みに操作するみたいな空間把握能力とかが試される。オペレーションスキルと空間把握能力が試される試験とかですね。

(スライドを指して)これはたぶんパイロットの資質、マルチタスクを確認するような試験で。

ちょっとこれを見ただけでは分かりにくいですけど、左下にあるジョイスティックといくつかボタンで操作をしながら。この真ん中に、黄色い二重線みたいなものがありますよね。

黒田有彩氏(以下、黒田):はい。

内山:あれがちょうど青い線を跨ぐような位置に調整しないといけないんですね。右と左をジョイスティックを使って、動いていっちゃうのを制御してこの位置に留めるという検査で。留めていくとポイントが上がっていって、あるところにボーナスステージがあるみたいな。けっこうゲームみたいなものなんですけど。

画面上のいろんなところを見ながら、ボーナスステージが光ったらトリガーを押してボーナスステージを今度はクリアをしてみたいな。それで点数を競う、点数が上がっていくというのを、90分間やるとかですね。

黒田:90分。

内山:90分持続して、マルチタスクをし続けるという。

黒田:普通のゲームだと、それまでにゲームオーバーになっちゃったりするけど。

内山:これはなかなかおもしろかったですね。たぶん油井(亀美也)さんとか、すごかったんじゃないかなと。パイロットでゲーマーですからね。

黒田:コンボですごいですね(笑)。

内山:すごいと思います。

「閉鎖環境」から出て、ヒーローポーズで記念撮影

内山:この辺は閉鎖環境から出た時ですね。

(画像提供:NHK)

腕に付けているのはアクチグラフというもので、その人の動きとかを全部記録できるんですよね。だから閉鎖環境の限られたさまざまな制約の下で、心理状況がどうなるか? というのは行動に現れるみたいで。「動きが段々と鈍くなる」とかですね。

黒田:内山さんだけちょっと変わった見せ方をされてますね(笑)。

内山:そうですね。どうしたんだろう(笑)。

(一同笑)

内山:大西(卓哉)飛行士もかっこいいですね。

黒田:確かに。ヒーローみたいですね。

内山:「みんなで見せよう」といって、撮ったやつですね。(次のスライドを指して)この辺も楽しかったですね。

僕は何度か行っていたんですけど、ヒューストンには普通の人はそれほどいかない中で。モックアップを見せてもらって、その中で宇宙遊泳しているような。

ライバルというより、みんなで同じものを目指す“同志”

内山:これはもう、試験中じゃないですね。

黒田:楽しそう(笑)。

内山:夕飯を食べに行って、なんかみんなやっていますよね(笑)。

黒田:江澤(佐知子)さんのTシャツに「top」って書いてある。

内山:「top」って書いてありますね。みんなアレですよね。ライバルというよりも「みんなで同じものを目指す同志」という感じが強くて、すごい楽しかったですね。

黒田:内山さんはアレですか? スプーンで視力検査をしている(笑)。

(一同笑)

内山:みたいですね。どうしちゃったんだろう(笑)。その横の大西飛行士も、けっこうテンション上がっていますよね。

黒田:上がっていますね。ビールの瓶を持ち上げるってすごいですね。

(一同笑)

黒田:すごい良い仲間だったんだなということが伝わってきます。

内山:そうですね。

この辺はもうアレですよね。3人が選ばれて訓練に入って。僕は出張でヒューストンに行った時に、一緒に会食をした時ですね。

選ばれた3名への“嫉妬”の感情は生まれなかったか

内山:だいぶ試験の話が長くなっちゃいましたね。

黒田:お伺いしたいなと思ったことがあります。ご本の中にもあるように、ファイナリストのみなさんはライバルというよりも仲間で「誰が選ばれても応援したくなる」ような感じだったと思います。

その中で「嫉妬」だったり「羨ましいな」という思い、そういう人間なら誰でも持っている感情みたいなものは、生まれなかったんですか?

内山:「やっぱりすごいな」と思うことは、たくさんあったんですよ。特に閉鎖環境の中で。個別の試験は「誰がどういうパフォーマンスだったか」がわからないんですよ。1人で試験を受けて戻ってきてという形だから、比較ができないんですけど。閉鎖環境での1週間というのは、ほとんどみんな一緒なんですよ。

個別の検査もあったんですけど、チームワーク(が試されるもの)だったり、2チームに分かれて課題をして競うというものだったり。ディベートとか論戦をして、外にいる審査員の方が「これはこっちが勝ち」みたいなことをやるようなものもあれば、みんなで一緒になって物事を解決するような課題もあったり。いろんなものがあったんですよね。

そうすると、もちろん二手に分かれて競うというのはあるんですけど、それでも5人で何か1つの課題に取り組むわけじゃないですか。そうすると課題自体が「誰かと競う」というよりも「そのチームワークの中で、パフォーマンスを最大化させるために自分が何をするか?」ということを、ひたすら考えることが多かったんですよ。

そうすると「この人すごいな」と思うということは、結局、頼れるチーム員じゃないですか。そう考えると「このチームで何かをやろうと思った時には、これだけのパフォーマンスを生み出せるんだ」と。それも自分のパフォーマンスもブーストされるような感じがしてて、お互いがお互いを高め合うようなパフォーマンスを見せられたんですよね。

そうなると、課題自体はけっこうハードなものもあるんですけど、楽しいわけですよ。すると気持ち的には、何かこう「競う」というよりは「一緒に試験に立ち向かう」。夢を目指してという思いが非常に強くて、そのために「すごい頼りになる人だな」というかたちで見ていましたね。

やっぱり油井(亀美也)さんすごかったなというのは、たぶんみんなもそう思っていたと思うんですけど。教官として自衛隊で指導する立場って、逆にいうと「試験する側」の気持ちもわかるし。

そういったチームで「チームワークを持って何かをする」というような時には、どういう立場の人がどう振る舞うか? みたいな。それをよくご存知だとは思いますけど、隙がなくて完璧だなと思いましたね。底知れぬ力がある。私より年も少し上だったので「ちょっとこれは敵わないな」と思っていましたけど、同じチームだったら本当に頼りになりましたね。

黒田:何て言うんでしょう。純粋にみなさん、お互いを尊敬され合っていたんですね。

内山:けっこうそうですね。今でもそうなんですけど、みなさんいろんな分野でがんばっているので、やっぱりすごく刺激を受けるんですよね。久しぶりに会って様子を聞いたりすると「そんなことにチャレンジしているんだ」とか「そういう分野でやっているんだ」というのは、やっぱり自分もがんばろうと思うし、すごく刺激を受けてます。

黒田:そこまで進んだ人にしか見られない景色や出会いがあるのが、この選抜試験なんだろうなと感じました。

<続きは近日公開>

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